
被相続人居住用家屋の特例とは?譲渡特例の要件をわかりやすく解説

相続で取得した家や、長く人が住んでいない空き家の売却を検討しているものの、税金や手続きが難しそうだと感じていませんか。
実は、一定の条件を満たすことで、被相続人居住用家屋の譲渡特例を使い、譲渡所得から最大3,000万円の特別控除を受けられる可能性があります。
ただし、この特例には細かな要件や期限があり、勘違いや準備不足で使えなくなってしまうケースも少なくありません。
そこでこの記事では、被相続人居住用家屋の特例の基礎知識から、主な要件、売却前の確認ポイント、申告や手続きの流れまでをわかりやすく整理します。
相続した不動産を少しでも有利に、そして安心して売却するために、まずは全体像から一緒に押さえていきましょう。
被相続人居住用家屋の特例と基礎知識
相続した実家が空き家になっている場合に利用できるのが、「被相続人居住用家屋」を売却したときの特例です。
相続または遺贈により取得した家屋やその敷地を一定の条件で売却すると、譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)が控除されます。
空き家の発生を抑制しつつ、相続人の税負担を軽減することを目的とした制度として、国税庁と国土交通省が制度内容を示しています。
相続した不動産の売却を検討している方にとって、まず押さえておきたい重要な仕組みです。
この特例では、被相続人が1人暮らしで居住していた家屋であることや、区分所有建物ではないことなど、対象となる「被相続人居住用家屋」の範囲が細かく定められています。
また、家屋が旧耐震基準で建築されている場合には、耐震改修を行うか、取壊して更地として譲渡することが必要とされています。
譲渡後に耐震改修や取壊しを行う場合も、譲渡した年の翌年2月15日までに工事を完了することが条件とされています。
このように、家屋の構造や工事の有無も、特例の適用可否に関わる大切なポイントです。
被相続人居住用家屋の特例による3,000万円特別控除は、一般的なマイホーム売却で利用できる3,000万円特別控除とは別の制度です。
いずれも譲渡所得から一定額を控除できる点は共通していますが、被相続人居住用家屋の特例は「相続した空き家」を対象とし、適用できる期間や対象となる家屋の条件がより限定されています。
一方、通常のマイホーム特例は自分が住んでいた居住用財産を売却する場合に利用するもので、空き家の発生抑制という目的は含まれていません。
どの特例に該当するかを正しく判断することで、相続不動産の売却計画を立てやすくなります。
| 制度名 | 主な対象資産 | 控除額の上限 |
|---|---|---|
| 被相続人居住用家屋の特例 | 相続した空き家と敷地 | 最大3,000万円 |
| 被相続人居住用家屋の特例(相続人3人以上) | 相続人が3人以上の空き家 | 最大2,000万円 |
| 通常のマイホーム特例 | 自己居住用の家屋と敷地 | 最大3,000万円 |
被相続人居住用家屋 譲渡特例の主な要件
被相続人居住用家屋の特例を受けるためには、まず家屋そのものに関する条件を確認することが大切です。
相続開始の直前まで被相続人が1人で居住していた家屋であり、相続開始の時点で被相続人以外に居住者がいないことが基本となります。
さらに、被相続人が生存中に事業の用や賃貸の用に供されていないことも要件とされています。
これらの家屋に関する条件を満たしているかどうかが、特例適用の出発点になります。
次に、相続から譲渡までの期間や譲渡価格に関する条件を押さえる必要があります。
相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに家屋または敷地等を譲渡することが求められています。
また、譲渡対価の額が1億円以下であることも重要な要件です。
加えて、譲渡までの間に家屋を貸付けや事業用に利用していないかどうかも、特例の可否を左右するポイントとなります。
被相続人が生前に老人ホーム等へ入所していた場合でも、一定の条件を満たせば特例の対象となることがあります。
具体的には、入所の理由が要介護状態などによるものであり、入所後も相続開始の直前まで元の家屋が事業の用、貸付けの用、他の者の居住の用に供されていないことが求められます。
一方、単身赴任や長期出張など、一時的な不在とみなされる事情とは区別される点にも注意が必要です。
老人ホーム入所の経緯や家屋の利用状況を整理し、特例の対象となるか慎重に確認することが大切です。
| 確認項目 | 主な要件 | 注意すべき点 |
|---|---|---|
| 家屋の状況 | 相続前は被相続人単独居住 | 同居親族がいると特例外 |
| 利用の有無 | 事業用・賃貸用で未使用 | 一時貸し出しも対象外 |
| 譲渡条件 | 譲渡価格1億円以下 | 期限内譲渡の完了必須 |
| 老人ホーム入所 | 要介護等が入所理由 | 入所後も家屋は空き家 |
相続した不動産を売却する前の確認ポイント
相続した不動産を売却する前には、まず相続登記が完了しているかどうかを確認することが重要です。
不動産の名義が被相続人のままでは売買契約を締結できず、特例の適用も受けられません。
あわせて、建物の築年数や構造を確認し、旧耐震基準で建築された家屋であれば、耐震診断や耐震改修の要否を検討する必要があります。
国土交通省や国税庁の資料でも、耐震性の有無が特例の前提条件とされているため、早めの確認が大切です。
被相続人居住用家屋の特例では、事業用や賃貸用として利用していないことが重要な要件とされています。
そのため、過去に事務所として使用していないか、賃貸借契約を結んでいないかなど、利用状況を整理しておく必要があります。
固定資産税の課税明細書や確定申告書の内容を確認すると、自宅用か事業用かの区別を把握しやすくなります。
もし一部でも事業用として使用していた期間がある場合は、どの範囲が自宅用に該当するか、慎重に確認することが欠かせません。
さらに、売却の時期と方法についても、特例の適用期限との関係を踏まえて検討する必要があります。
この特例は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡することが条件とされていますので、売却活動の開始が遅れると適用を逃すおそれがあります。
また、更地で売却するのか、耐震改修を行って建物付きで売却するのかによって、かかる費用や手続き、必要な証明書類も変わります。
相続税や譲渡所得税の負担も含めて、全体の費用対効果を比較しながら売却計画を立てることが大切です。
| 確認項目 | 主なチェック内容 | 見落とした場合のリスク |
|---|---|---|
| 権利関係の確認 | 相続登記完了・名義統一 | 売買契約締結の遅延 |
| 建物の状態確認 | 耐震性・老朽化の把握 | 特例不適用や価格低下 |
| 利用状況の整理 | 自宅用か事業用かの確認 | 特例要件の不充足 |
| 売却時期と方法 | 期限内譲渡と工事要否 | 3,000万円控除の喪失 |
特例を逃さないための申告・手続きの流れ
被相続人居住用家屋の特例を受けるには、譲渡した年分の所得税の確定申告で「譲渡所得」として申告することが必要です。
この際、譲渡所得の内訳書や特例の適用を受ける旨の記載を行い、譲渡価格や取得費、譲渡費用などを整理しておきます。
また、相続開始日や譲渡日、譲渡対価の合計額が1億円以下であるかといった要件も、申告書作成前に国税庁のチェックシートなどで確認しておくと安心です。
電子申告を利用する場合でも必要書類の添付省略が認められないものがあるため、保管や提出方法を事前に整理しておくことが大切です。
特例の適用を受けるには、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」を確定申告書に添付する必要があります。
確認書の交付申請は家屋の所在地の市区町村で行い、被相続人の住民票の除票や相続人の住民票、相続による取得を示す登記事項証明書など、複数の書類をそろえることになります。
さらに、相続の時から譲渡の時まで事業用や貸付用に供していないことを示すため、電気・水道・ガスの使用中止日が分かる書類や、空き家として管理していたことが分かる書面などの提出が求められる場合があります。
申請から確認書の交付まで一定の日数を要することが多いため、売買契約の締結後は早めに申請手続きを進めることが重要です。
相続した不動産の売却や特例の適用には、税法や手続きの細かな要件が多く、自己判断だけでは見落としが生じやすくなります。
税務署や国税庁の情報だけでは不安な場合には、税理士などの専門家へ相談することで、適用の可否や必要書類の整備について具体的な助言を受けることができます。
とくに、被相続人が老人ホームに入所していたケースや、相続人が複数いるケースなど、判断が難しい事情がある場合には、早い段階で相談しておくと安心です。
特例の要件を満たしているにもかかわらず、申告や確認書の不備で控除が受けられない事態を防ぐためにも、専門的な知見を活用することは大きなメリットになります。
| 手続きの段階 | 主な内容 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 売却前の準備 | 要件確認と必要書類整理 | 適用期限と価格要件確認 |
| 確認書の申請 | 市区町村へ交付申請 | 添付書類不足の防止 |
| 確定申告 | 譲渡所得の申告と控除適用 | 申告期限内の提出徹底 |
まとめ
被相続人居住用家屋の特例は、相続した空き家を売却するときに最大3,000万円の特別控除が受けられる強力な制度です。
ただし、被相続人が実際に住んでいたことや、譲渡価格が1億円以下であること、相続から売却までの期限など細かな要件を満たす必要があります。
また、老人ホーム入所のケースや、事業用・賃貸用に使っていた場合など、適用可否の判断が難しい場面も少なくありません。
当社では、不動産の現状確認から売却方法の検討、必要書類の準備、税理士など専門家との連携まで一括してサポートしています。
「うちも特例が使えるのか知りたい」「申告や手続きが不安」という方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
